パイゾ・ブログ翻訳…失われし信託の物語:突撃陣

失われし信託の物語:突撃陣



 Pathfinder Lost Omens: Pathfinder Society Guide Victor Manuel Leza Morenoによるイラスト、
左からカリスロ・ベナリー、エアンドゥ・クライン、ゴーム・グレートハンマー、そしてフォーラ・バルン

「俺達ならやれる」

その言葉は、グロリアス・ペイオフの狭苦しくも整った船長室に響き渡る。パスファインダー協会 の ヴィジラント・シール のリーダーである エアンドゥ・クライン は、興奮して確信を持って話す。「シールの人員を配備し、南からのフェイ軍の移動を阻止すれば、残りの派閥はポータルに最も近い軍勢を打ち負かすことができるだろう。ポータルを開けて、内部を制圧するなり封印するなりすれば、最初の攻撃で奴らが動揺している間に、俺たちは整然と後退できるというわけだ!」

その有名なパスファインダーが彼の主張を強調するためにテーブルの上に手をたたくと、フォーラ・バルン-テーブルの端にある巻物の山をすくう背の高いエクジェのエルフ- が疑わしげに眉を上げ、喉を潤した。彼女は簡単なジェスチャーですぐに仲間の注意を引いてみせる。


「それで、あなたの言うほど円滑に事が進まない場合はどうするのです?時の運とフェイの熾烈な魔法の両方が我々の期待通りに立ちはだかるという仮定に、我々を信頼してくれる人々の人生を賭けるというのですか? 潜在的な結果の1つとして多くのパスファインダーの命を失うことを含む計画には私は興味などありません」

フォーラの目は巻物に戻ったが、他のパスファインダーの戦略家たちは、彼女がまだ進行中の会話に敏感であることを知っていた。


「そこで、私たちの出番だ」

テーブルの端に腰を下ろした筋肉質なハーフオークの女性、元海賊で現在はホライゾン ハンターのリーダーであるカリスロ・ベナリーが口を挟んだ。「ハンターのうち何人かを東の稜線の偵察に送っている、それによるとそこは木々が比較的まばらだ。何か良くないことが起こるなら、彼らは私に信号を送るだろう」

彼女がテーブルに寄りかかると、彼女の鋭い目線は地図全体を駆け巡り、さまざまなパスファインダー部隊の位置を示すマーカーと旗、およびそのエリアに侵入しているフェイ・モンスターの無数の集団の位置を再確認した. 彼女は仲間の最後に視線を上げる。「他に何かあるか、ゴーム?」


「ああ。いいものを用意してあるぞ」ドワーフが頷く、ドワーフの金属の留め金の軋む音を立てながら、静かに地図を指し示す。「私は、グランド アーカイブの最高のバード、ウィザード、クレリックをチーム全体に配備している。状況が美しくならぬ場合、彼らは我々の美しき撤退のために必要な魔法的サポートを確実に提供するだろう。そして、彼らはその地域について私たちが持っているすべての年代記を調べている。うまくいけば、例え予期できぬ状況であっても、混乱が最小限に抑えられ、我々が正しい決定を下しそれに対応するための最良のチャンスが与えられるだろう」


エアンドゥは再び部屋を見回し、彼の仲間のパスファインダーのそれぞれの目を順に見る。「もう異論はないな?行軍を開始するぞ?」

他の者たちは、一人ずつ頷く。それ以上の議論をすることなく、それぞれが自分のチームに割り当てられた協会のエージェントの指揮をとることになった。

エアンドゥ は最初に船室から出てきて、待っていたヒポグリフの後ろに飛び乗り、それは彼を岸に送り、その騎手は空中偵察任務を再開した。ゴームは短い言葉を呟き、リズミカルな動きで指を弾くと、彼の体は、きらめく光の雲の中でゆっくりと消えてしまった。フォーラは船長室から出てを船の縁にまっすぐ歩き、まるで甲板が自分の 1 フィート前で終わっていることに気付いていないかのように、その外へ向かって歩いてゆく。穏やかな海の波が手すりを乗り越える彼女の足に近づくと、その波は甲板と同じように彼女の体を支え、近くの海岸線へと運んでゆく。


カリスロは自分の要るべき場所が自分の船にあることを知っている、だから他の人たちのようにここを去るつもりはなかった。彼女は三角帽子をかぶって船長室を出て、静かにドアを閉めて鍵をかけた後、甲板に上がって操舵手の横に立つ。

「面舵いっぱい!」カリスロは大海の波を切り裂くような声で叫び、乗組員のおしゃべりを止めた。「カタパルトの準備だ!我々は最善を尽くすことから始める!それで次は何をするか分かっているな!?」

彼女の最後の質問で、甲板を駆けていた船員たちは、「なにかぶっとばすこと」と答え叫ぶに十分な時間、作業を止めた。船が近づいてくると、港の武装が岸に並び、カリスロは小さな笛を口に当てて吹く。可聴音の出ないものだが、カリスロは陸上の同士が信号を受信することを知っていた。

彼女の期待の正しさが証明されるまで、ほんの少し待つ必要があった。近くの海岸では、パスファインダーのチームが魔法の不可視の外套の中から殺到し、錬金術の火の瓶を、曲がりくねった古いバオバブの木の塊のように見えるものに投げつけた。 ほんの数秒の後、それらの木々に恐ろしい命が吹き込まれ、自分自身の根を引き抜き、攻撃してくるパスファインダーに向かって突進する。

"撃て!" カリスロの叫び声に、彼女の大砲は致命的な弾幕を放ち、魔法のように強化された金属の砲丸を最初に海風の中に飛ばし、それが樹木の守護者の木の体に向かってゆく. 船長はグロリアス・ペイオフ の乗組員が協会の敵にもたらした破壊と効果を認めた。ゆっくりと微笑みに口角を曲げ、彼女はさらに命令を出そうとした。"順調なようだ、今はな!"


沿岸のジャングルの奥深くで、エアンドゥは二人組のレッドキャップと死闘を繰り広げていた。このねじれた小さなフェイは、筋肉質のノームのデフォルメのように見え、それぞれが 3.5フィートもの長さの刃を持つ大鎌を振るっていた。最初の一振りが彼の左脇腹に来ると、エアンドウは素早く右手から左手に剣を振るい、その一撃を高く跳ね返した。

もう一人のレッドキャップは、気が散っている間にパスファインダーの足を掬おうと、右から足を踏み入れる。エアンドゥは素人ではない、最初の防御からの勢いを利用して有利を取り、最初のレッドキャップの打撃の力によって2人目の敵の笛のついた刃の上でねじれた宙返りを起こして見せた。地面とほぼ平行になるように体を回転させたエアンドゥは、剣を右手に戻し、柄を掴みながら前へ突く。刃は2人目レッドキャップの汚いひげを引き裂き、その首の後ろまで届き、ゴロゴロ言うような殺人的なフェイの笑い沈黙させた。

宙返りをから三点着地をすると、エアンドゥはバランスを保つために左手を地面につけたまま、2度目の攻撃で右手を後ろに回す。残ったレッドキャップが大鎌を振り上げて防御している間も、エアンドゥは再び剣の手を入れ替え、しゃがんだ姿勢から前方へ飛び出し、左利きのグリップで刃を掴んだ。

レッドキャップの目はまだわずか1秒前に刃があった場所を見ていたが、驚きと共に顔を上げると、エアンドゥがフェイの胸から刃を引き抜くのを見た。

エアンドゥは焦りも疲労も感じず、刃の血を払い、森の奥へと突進し、 ブドウの木に絡めとられたパスファインダーの群れから、怒れるドライアドの注意をそらすべく叫んだ―


エアンドゥの驚異的な剣技と軽業の偉業が成された場からほんの数メートルの場所で、ゴールは不可視の外套の中に立っていた。彼は驚きの笑い声を静かに上げ、レッドキャップに撃つ為-そしてエアンドゥを助ける為-その手に維持していた魔力を捨てた。ドワーフは戦いの音をたどり、ジャングルの奥へと向かう。

ゴームがフォーラ・バルンを見つけるにそう長くはかからなかった。彼女は、空中に掲げられたそのシャーマンの手によって、魔法のようにジャングルの生物たちに指示していた。とげのあるブドウの木の群れが恐るべきピクシーの群れを覆い、古代のシダは広い葉を上げて、パスファインダー部隊から離れた場所のナイアスによって発射された魔法の水の噴射をそらす。

ゴームはすぐにハープを取り出し、数年前、自分で書いた子守唄-花びらの乙女の眠り、というタイトルだったと彼は記憶している-を演奏し始めた。戦闘の喧騒の中で奏でられた音を聞いて、ピクシーとナイアスは眠そうに瞬きを始めた。気を散らすだけで、フェイを眠らせるには十分ではなかったが、フォーラがブドウによって最も近い者たち切り刻み、他の生物を森に急いで送り込むのに十分な時間を稼いで見せた.


"よくやったな!" ゴームは叫び、自分の不可視を解き、フォーラの隣に足を踏み入れる。しばらくして、エアンドは近くの木から現れ、不機嫌そうに微笑み、袖からおがくずのようなものを払い落とした。パスファインダーの他の部隊が彼らに加わり、すぐに小さな遠征軍ができあがりつつあった。

「さて、ここからが本番だ」エアンドゥ は、前方のジャングルの奥底を見つめながら言った。「俺たちが来ることを知っている敵、すなわち谷に隠れているフェイの軍団と森を通り抜けて、道のないジャングルを長く行進し、そして誰も開けた事のない魔法の扉を開いて・・・中にいる奴が俺たちを皆殺しにしないことを祈る」

「君の言うとおり」ゴームは答えた。「私はパスファインダーでいることが大好きだ!」


著者について

Michael Sayre は、元 Pathfinder Society の開発者であり、Paizo のデザイン チームの最新メンバーです。彼は多作なフリーランサーでもあり、Pathfinder RPG やその他の卓上ゲーム システムをサポートするために、Lost Spheres Publishing、Rogue Genius Games、その他多くの企業など、他の出版社から多数の Paizo の書籍や出版物に寄稿しています。オーガナイズドプレイ ブログや象徴的な錬金術師、ファンバスの紹介で、マイケルの短編小説をもっと見ることができます。


テイルズ オブ ロスト オーメンについて

ウェブベースのフラッシュフィクションであるテイルズオブロストオーメンスシリーズは、パスファインダーのロストオーメンスの時代の設定をエキサイティングに垣間見ることができます。パイゾのパスファインダー テイルズ ラインの小説や短編小説など、タイアップ ゲーム フィクションで最も有名な作家の何人かによって書かれたテイルズ オブ ロスト オメンス シリーズは、パスファインダー設定の登場人物、神々、歴史、場所、組織を探求することを約束します。魅力的なストーリーでゲーム マスターとプレイヤーの両方に刺激を与えます。

・注釈

この物語はパスファインダー協会シナリオs2-00での一幕である。

ヴィジラント・シール:エアンドゥ・クラインが率いる派閥。

ホライズン・ハンター:カリスロ・ベナリー率いる派閥。

グランド・アーカイヴ:ゴーム・グレートハンマー率いる派閥。

エンヴォイズ・アライアンス:フォーラ・バルン率いる派閥

エアンドゥがレッドキャップとの戦いで披露してみせた宙返り技は、Pathfinder RPG:Lost Omens Pathfinder society guideに掲載されている「Farabellus Flip」という特技を再現している。

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